観てから読みました。

文芸作品の評論はできませんが、大変読みやすい作品で映画の方は原作の雰囲気を上手く再現している上に、ドラマとしてうまくまとまっていて、さすが名監督だと再確認しました。

この作品に惹かれたのは、昭和10年代、1930年後半の世相を上手く表現していると思ったためで(もちろん実際は知りませんが)、主人公の女中タキがちょうど祖母と同じ年代、作中、タキの回想録にちょくちょく「それは嘘だろ戦前は暗黒時代だろ」とツッコミを入れる大甥が今の自分と同じ世代ですね。

物語が5年後東京オリンピックが開催されることが決まった昭和10年ぐらいから始まってますが、そこから暫くシナ事変の頃はデパートの大売り出しがあったりで世の中結構景気はよくて、ただ段々と不安な空気が立ちこめてくるも真珠湾攻撃で一気に世の中明るくなったと思ったら、それから暗雲立ちこめて悲惨な状態に真っ逆さま。

当時と今とで国家予算の破綻具合が似ていると言われていますが、この先国家間の総力戦はあり得ないにしても、ちょうど5年後が東京オリンピックで、アベノミクスでなんとなく景気は悪くない感じなところが妙に一致していて、その先5年後、つまり今から10年経ったらどうなっているのかちょっと不安にはなりますね。

一方で、この当時に生まれた中流階級の生活がその後の「昭和」の基本形なんだと思うのですが、それがもはや風前の灯だと思うのと、もっと遡れば戦国末期から続く江戸的な社会風土もいよいよ自分の世代ぐらいで終わりなんだろうなと、最近「村」の本を読んでいてそう思うこともあって、この先はまったく違う世界観に切り替わるのかなという予兆も感じます。

暫くはどう考えても(国家予算どころか業界の動向を観るだけでそう思いますけど)明るい話題にほど遠いので、どう展開するのか予測も付きませんが、案外明るい未来が待っている感じもしますね。なんとなくですけど。