ネットツールを使って共創しよう、そのために情報共有をしたいなぁと考えたときに、自分がまず最初に思いつくツールはメーリングリスト(ML)です。

レスポンスのスピード感、受送信端末を選ばない、主体的にスレッド(同一タイトルのメールのまとまり)管理ができるという点では、今でも一番の使い勝手だと思います。
会社のドメインもGoogleAppsで運用しているので、ブラウザで簡単に情報整理ができるGmailだと、MLを使った情報共有は最強の環境だと思います。

ただし、メール端末が普及し多くの人のレスポンス速度が上がってくると、今度はそのスピードが早すぎることに問題があるのではないかと感じるようになりました。

特にそれは軽快なツールであるMLに顕著で、参加者全員がメールを土台とした情報共有のスピード感を、仕事の経験値として持っている人たちが集まっていれば問題を感じませんが、そこに携帯メールをポツポツ打つことすらまれだという人が同じプロジェクトに加わった場合には、レスポンススピードが速い人も、そうでない人もそれぞれが、「遅っ!(早っ!)」と意識のズレ生まれ、それが最後まで埋まりません。

そして、この意識のズレは結構根深い問題を抱えていると思います。

「遅っ!」って感じる人は、イライラするぐらいでなんとかすみますが、「早っ!」って思う人は、最初こそ、すごないと思って必死になってついてきてくれますが、そのうち「大変だ・・・」となり次第にメールボックスを見ることが苦痛になって、最後には着信がある度にびくびくするようになってしまいます。

実際、大量のメールが流れる環境にいると精神的な不調を覚えるという人は少なくなく、またそのような人は、もともと控えめな性格だったり、そもそもレスポンスが遅いという引け目もあったりで、なかなかはっきりとそのことを主張しずらい傾向があると思います。恥ずかしながらこのことに気づいたのは割と最近のことで、精神的に負担をかけられない病気を煩っている社員から、大量のメールを流すのを止めて欲しいと指摘されて初めて考え始めました。

私自身は、何しろ最初に就いた仕事がパソコン解説書の編集者ですから、パソコン(や最近ではスマホ)を仕事環境として最適にカスタマイズすることは苦痛どころか、カスタマイズが上手くいかないと居心地がわるくて寝付けないほど好きな方です。そのように、ひたすら仕事のパソコン環境のカスタマイズを繰り返して今に至る自分の知識や経験を前提に語れば、そのスピード感や情報量での発信は、そこまでの力を持っていない人や、もともとコミュニケーション受容量の少ない人に対しては、ある意味ITリテラシー暴君のような振る舞いであったのだろうと振り返っています。

特にこちらが「すぐに返事を返さなければっ」と思って、どこでもすぐに返信ができる環境を必死に努力して作れば作るほど、ようやくボールを返したと思ったのに剛速球で帰ってくる!!という相手側の負担になっていることに気づきませんでした。いや実際には気づいていたけれども、それを調整できる人(つまり聞き流せる、読み流せるスルー力が高い人)が残っているから大丈夫だと考えていたところはあったと思います。

これはTwitterをはじめとするソーシャルメディアでの発信でも最近強く感じることで、音声としての言葉として怒声を張り上げないにしても、大量のテキストを繰りだしていれば、それがどんなにやさしい言葉であっても、そこには暴力性が潜んでいると思います(と感じているのでつぶやきが減ってる)。

そこまで考えてみて、これまで自分が考えていたことが、単なる能率アップに過ぎず、全体の生産性を高めるという意味での効率アップに繫がっていなかったということに思い至りました。愚かなシステムを能率アップすれば、そりゃもう愚かの再生産でしかないわけです。

そこで、そもそもの情報共有のあり方がどうあるべきか設計し、それに適したツールをなければならないというわけですが、研究者ではないのでこれだと思うツールを次々に試し、使えそうだと思えばその場で改善していくほかありません。

そうやって今現在、このツールをメールと併用すれば上手くいきそうだと感じているのがサイボウズLiveです。ここ半年ほど運用してみて、また社内外の人々にプロジェクトを立ち上げるごとに利用を勧めてきて、まだ完璧ではないですが割と使えるなと感じています。とくに、情報の流れを整理するという面で力を発揮していて、情報流通のスピード調整にも大きな力を発揮していると思います。

具体的にどうやって使っているのかは、長くなったので別エントリーにします。