今年もたくさん本を読みましたが、繰り返し読み直している1冊です。

00年代に何が変わったのか、その空気を描写してありました。すべてがなるほどとうなずくばかり。

「若い男の世間が消えた」という章では、情報誌がなくなり男性誌がなくなっていった理由を明快に解いてくれていますが、いまビジネス書が消えていこうとしていて個人的にどうして?と思っていたことを解決してくれました。

数年前から企画が難しい・・・と思い初めて、それが加齢による能力低下と考えていたのですが、そうではなく(もちろんそうでもあるけど)、「これを押さえておかなければ」といった街の流れのようなものがなくなっていて、そこを押さえておけばOKだ、的な従来の企画フレームワークでは企画の実現が困難になっていること、そういった自己分析に至りました。

個人的には、自分がいつの間にかタバコを止めた2005年ぐらいが転換点なような気がします。当時は社長業でアタフタしていて、それで余裕がなくなったと思っていましたが、次第に社会全体で一服する余裕がなくなり、場所が無くなり、火や煙が匂いが粗野なものの象徴になってきて。今思えば、あのタバコ部屋には、若い男の世間があったような気がしますから。

清潔で洗練された都市生活、どこまでも欲望が細分化される現代では、莫大にものが売れること自体がもはや暴力的で、そういったものを排除し続ける社会になっているようです。

岡田斗司夫さんがメルマガで一億総ヤンキー化と言っていたのですが、なるほどなと思いました。いまや有料メルマガ読んだり、本屋で本を買ったり、映画を見たりする「非ヤンキー」は少数らしいです。

逆に言えば電子出版は、そのどこまでも細分化されている現代人にあった出版システムだと思いますし、だからこそ、そこでランキング争いすることは不毛なのだろうと思います。一方で、本を出す(出したい)と思うこと自体は、ヤンキー的なところがあるはずで、いまはそこに着目してます。

話がそれましたが、この本読んで、なんで?と思っていたことが、かなりすっきりしました。まとまったらどこかで書きます。

やさしさをまとった殲滅の時代 (講談社現代新書)

堀井憲一郎
出版年月日:2013-10-20
価格:630円
情報取得日時:2013-12-05 13:42