「紙の本」を作る仕事を続ける理由

「ISSHIKI」事業を取引先の編集者の皆様にご案内差し上げてから、好評と取引拡大の機会を頂いてます。ありがとうございます。

個人的にデジタルコンテンツビジネスに邁進する方向性に変わりはないのですが、なぜまたこのタイミングで紙の本を作る仕事に戻るようなサービスを展開させているのか、私のことを電子書籍ビジネスをやっている人としてお会いした方の方が増えているので、あれれ?デジカルは電子は辞めたの?と思われないように説明します。


もう4年前になりますが次のようなエントリーを書きました。電子に邁進しているブログを書き続けていますが、この当時から方針は転換していません。

この時に未来像として描いていたことがISSHIKIサービスの原案と、POD(プリント・オン・デマンド)技術を利用した出版サービスで、後者を金風舎のサービスとしてこれから展開します。

この紙とデジタルの同時展開は、私自身が編集者として仕事を初めた当初からデジタル組版技術に深く携わっていたことに潜在的な理由があります。紙の本を作ることを求められながらも、その仕事はデジタルでの生産性向上を追求するものでした。

以来この十数年で得られたデジタル制作技術を、改めて出版編集者視点で、本作りのプロフェッショナルである現役編集者の方々や、全国にいる本を出版したい人々に提供することを考えていました。

ただ、ISSHIKIなどと新たな名称までつけて紙の本作りサービスとして提供しようと強く考えるようになったのは、実のところ電子書籍関連事業を強力に推進するようになったためです。


いつだったか記憶は定かではないのですが、ニューズブックプロジェクトも始まり、携わる仕事が電子書籍一色になり初めたころ、実家で事業内容について話をしているときに母が一言ポツリと言いました。

「あんたの言うとおり電子書籍ばっかりになったら、私が買える本がなくなるやないね」

この数年前に父とは新聞紙論争で「お前の言うとおりもう新聞紙はいらんな」と勝利していたこともあり、実家ではデジタル派が主流を形成していたのですが、この母の素朴な一言は突き刺さりました。

そうか将来的にデジタルコンテンツが主流になるかもしれないが、少なくとも既存の出版社には、書店店頭で売れる紙の本を作り続ける社会的な役割が厳然として残っているなと。

実のところKindleを文明開化の黒船のごとく讃え、ゴミのような電子書籍を粗製乱造する業者や、電子にしない出版社はダメだといった安易な業界批判の論調にも辟易していたので、そういった浮ついた流れから距離を置きたいこともあり、この母の言葉を契機にもう一度紙の本の制作と電子出版について見直そうと考えました。

これが紙の本を作る出版社のためにISSHIKIサービス立ち上げを加速させた理由です。


タイミングよく昨年AmazonPODサービスも始まり、本作りサービスを一般のお客さんにも提供できる素地が整ってきて、私の中で未分化だった「紙の本」と「デジタルコンテンツ」の仕事の位置づけが明白に整理がつきました。

そこで「本作りを楽に楽しく」のISSHIKIと「本質をコンテンツとしてデザインする」のHONTENTSとに事業を2つに分けて進めることにしました。

経営的には、職人的な技術が求められがちなデザイン制作業を、組織的に展開することや、2事業を同時育成など大きな課題があるのですが、これも生産性高いチームを作るという課題と考えると将来性があり取り組みがいのある課題なので、経営者として難しい課題を楽しませてもらおうと思ってます。